はじめに
このあたりで、新聞、テレビ、ネット等でよく見聞きするフレーズ「国の借金」について考察しましょう。他の記事で述べましたが、以前に私が飲み屋で、常連のオッサンに「オメーらの世代はこれから国の借金を返していかねーとならねーんだからな!」とお説教を頂いたときの「国の借金」です。
その節はいろいろとご質問させて頂きたいことがありましたが、飲み屋さんで政治経済の話は禁句と言いますし、このときは一部だけで我慢しました。ご質問させて頂きたかったことを整理してみます。
これらについて、以下で一つずつ考察していきます。
「国の借金」とは何ですか?
グーグルで検索してみました(2023年1月14日)。

検索順位1位は財務省のHPでした。このサイトで調べてみましょう。
財務省の見解
このリンクをクリックすると、「4 日本の借金の状況」という項目のページに入りました。「国の借金」というドンピシャのキーワードはありませんが、「日本の借金」というのがこれに相当するのでしょう。このページに、わかりやすいグラフが出てきました。

このページと周辺のページを見ると、「日本の借金」とは国債(普通国債)の残高を意味するようです。この図から明らかなように、国債の残高はどんどん膨らんでいます。
上記ページの次のコマは、「『借金』の問題点」という項目です。この項目から一部を引用します。
日本では、歳出と歳入の乖離が広がり借金が膨らんでおり、受益と負担の均衡がとれていない状況です。現在の世代が自分たちのために財政支出を行えば、これは将来世代に負担を先送りすることになります。
日本の借金を諸外国と比べると 財務省 (mof.go.jp)
そして、「負担」を先送りした場合の問題点が挙げられていますが、ここでは説明を省略します。興味のある方は、リンクを開いて読んでみて下さい。
考察
国債残高は、2022年度末には1,029兆円・・。なるほど。これが「国民1人当たり1千万円の借金」と言われる所以でしょうかね。
でも、ちょっと待って下さい。国債の債務者は発行者である政府のはずです。一般の国民である私たちが借金をしているわけではありませんよね。
上記の引用の通り、「将来世代に負担を先送りすることになります」とありますが、「将来世代」って何年後くらいの世代でしょうか。
また、「将来世代」の誰が負担をすると言っているのでしょうか。借金をしていない私たちが負担をする必要はないはずですよね。
「税金で国の借金を返していかなければならない」と時々見聞きしますが、おかしな話です。なぜ、政府の借金を私たちが肩代わりしなければならないのでしょうか。それって、私たちの財産権を侵害することにならないのでしょうか。
「国の借金で造ったインフラ等の恩恵を受けているのは我々なのだから、国の借金を我々が税金で返していくのは当たり前だ」とお叱りを受けるかも知れません。
しかし、他の記事で書いたように、税は財源ではありません。こちらの記事で書いたように、税の目的は物価の調整等です。つまり、税はインフラ等を造るための資金ではありません。
ところで、現在の国債残高は1995年度末と比べて約5倍になっています。1995年度末から見た「将来世代」である現在の私たちの世代の誰かは、負担に苦しんでいるのでしょうか。
少なくとも私はそのような負担に苦しんでいませんし、私の周囲にもそのような方を見かけません。国債残高が1,000兆円程度ならまだ大丈夫ということでしょうか。それなら、国債残高が幾らまで膨らめば、負担を実感できるのでしょうか。このあたりは財務省HPでは言及されていません。
うーん。わからないことばかりです。
「国」がどこから「借金」をしているのですか?
それでは、国(政府)がどこから借金をしているのでしょうか。債務者がいれば当然、債権者がいます。再びグーグルで検索してみました(2023年1月25日)。

検索順位1位は再び財務省のHPでした。このサイトで調べてみましょう。
財務省の見解
このリンクをクリックすると、わかりやすいグラフが出てきたので引用します。財務省の見解っていうか、これは客観的事実ですね。

国債の約半分(49.6%)は日本銀行が保有しています(左のグラフ)。次に多いのが生損保等(19.6%)、次いで銀行等(14.4%)、・・、海外(7.1%)、家計(1.2%)、・・となっています。なお、真ん中のグラフの「国庫短期証券」とは、他の記事「税は財源ではない」で述べました。
考察
国債は、政府にとっては負債ですから、保有者にとっては資産です。これと上記の事実から、次のことが言えるでしょう。
日本は負債も膨大なのかもしれませんが、資産も膨大にあるのですね。
「国」がその「借金」を返せなかったらどうなるのですか?
などという見出しをつけたものの、そもそも「国」がその「借金」を返せなくなることなどあり得ません。だって、財務省HPの中にこんなページがあります(2023年1月24日に検索)。

詳しく見ていきましょう。
財務省の見解
上図は財務省HPの「外国格付け会社宛意見書要旨」というタイトルのページです。ここには、外国の格付け会社に対する意見というか抗議のようなものが掲載されています。昔、日本国債の格付けを下げられたことに怒っているようです。次の引用は、上図のページの一文を抜き出したものです。
(1) 日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない。デフォルトとして如何なる事態を想定しているのか。
外国格付け会社宛意見書要旨 : 財務省 (mof.go.jp)
「デフォルト」とは債務不履行、つまり借金を返せなくなるということ。日本国債の債務不履行(「財政破綻」とも呼ばれます)は考えられないということを言っています。
ここで、「自国通貨建て国債」という文言が出てきました。確かに、日本国債は全て自国通貨建て、つまり「円建て」です。ドル建てでもユーロ建てでもありません。
とにかく、財務省の見解では、「国が借金を返せなくなる」という心配は不要ということですね。それなら何故、将来世代の負担が問題なんて言うのでしょうかね・・。
考察
それではなぜ、自国通貨建て国債のデフォルトは考えられないのでしょうか。まず、自国通貨建て国債を発行している日本の場合を考えてみましょう。
そして、他国通貨建て国債を発行している場合はデフォルトのリスクがあるのか考えてみましょう。更に、固定為替相場制を採用している場合についても考えてみましょう。
日本の場合
日本の場合、自国通貨である「円」を発行できる主体は日本銀行です。詳細は、「日本銀行の機能と業務」で述べました。
日本銀行は原理的には際限なく円を発行できます。「書く」だけですから。つまり、日本銀行は必要なだけ円を発行できます。ということは、日本銀行はいくらでも国債を買い取ることができます。ということは、政府は最終的には日本銀行からいくらでも資金を調達することができます。荒っぽい言い方をすれば、「借金は借金して返せばいい」ということになります。
これで何が問題なのでしょうか。実際、今までこれでやってきたのではないでしょうか。これで何か問題が生じているのでしょうか。つまり、財務省もおっしゃるように、自国通貨建て国債のデフォルトは考えられません。
他国通貨建て国債の場合
仮に、日本政府が例えばドル建て国債を発行していた場合はどうでしょう。この場合、ドル建て国債の償還日までに、必要な額のドルを調達しなければなりません。日本銀行は、残念ながらドルを発行することはできません。
そして、日本は管理通貨制度を採用していますので、円はドルに対して固定されていません。つまり、日本政府がドル建て国債を発行した後に、何らかの理由で円がドルに対して暴落してしまう可能性があります。したがいまして、償還に必要なドルを調達できなくなる可能性があるため、債務不履行に陥る可能性があります。
固定為替相場制の場合
仮に、円が例えばドルに対して固定されている固定為替相場制を採用している場合はどうでしょう。この場合、日本銀行は際限なく円を発行することはできません。
日本銀行が際限なく円を発行してしまうと、円安ドル高へ向かう圧力がかかります。そうすると、固定為替を維持することが困難になります。つまり、日本銀行が発行できる円には限りがあります。したがいまして、償還に必要な円を調達できなくなる可能性があるため、債務不履行に陥る可能性があります。
まとめ
財務省の見解の通り、私も日本国債の債務不履行は考えられません。そう考える理由としては次の2つです。
この2つを満たしているならば、どうすれば債務不履行することができるのか思い浮かびません。
それなら、すべての国が同様の条件を採用すればいいのではとも思えます。しかしながら、それは財務省もおっしゃるように、日・米などの「先進国」でないと採用することは困難です。これについては他の記事で考察したいと思います。
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