はじめに
「トリレンマ」という聞きなれない言葉が出てきました。「トリレンマ」とは、3つのうち2つまでしか選択できず1つは諦めるしかないことをいいます。
身近な例では、ジャンケンが挙げられるでしょうか。3人でジャンケンをした場合に、3人が勝つことは不可能です。2人が勝った場合は、残りの1人は必ず負けとなります。
「国際金融のトリレンマ」とは、国際金融政策において次の3つの政策を同時に実現することができないことを意味します。
- ①為替相場の安定
- ②金融政策の独立性
- ③自由な資本移動
国際金融のトリレンマは、「開放経済のトリレンマ」と呼ばれることもあります。この記事では、簡単なモデルを用いて国際金融のトリレンマについて説明します。
前提
ここでは話を簡単にするために、仮に地球上にA国とB国の2か国しかない場合を考えましょう。更にここでは、A国とB国はそれぞれ独自の通貨を採用しているとします。
以下では、A国の国際金融政策に注目して国際金融のトリレンマについて考えましょう。まず、A国が上記の3つの政策のそれぞれを守るということは何を意味するのかをまとめます。
①為替相場の安定を守る場合
この場合、A国は、A国の通貨をB国の通貨に対して例えば所定のレートで固定しようとします。いわゆる「固定相場制度」です。
②金融政策の独立性を守る場合
この場合、A国の金利は、B国の金利に対して独立に変動し得ます。
③自由な資本移動を守る場合
この場合、A国は、B国との間で例えば自由に貿易を行うことができます。
①為替相場の安定と②金融政策の独立性を守る場合
まず、①為替相場の安定と②金融政策の独立性を守る場合です。そして、この場合は③自由な資本移動を守ることができないことを説明します。この場合、上記から以下のことが前提となります。
上記の前提より、A国は②金融政策の独立性が守られています。ここで仮に、A国の金利がB国の金利に対して低下したらどうでしょう。
A国またはB国の人々には、金利の高いB国で資産を運用するためにA国の通貨をB国の通貨に両替したいという動機が発生します。
しかし、ここでA国の通貨をB国の通貨に両替するという③自由な資本移動を許すと、A国通貨安(B国通貨高)の方向へ進んでいきます。これでは、A国は①為替相場の安定を守ることができません。したがって、A国は③自由な資本移動を諦めなければなりません。
②金融政策の独立性と③自由な資本移動を守る場合
次に、②金融政策の独立性と③自由な資本移動を守る場合です。そして、この場合は①為替相場の安定を守ることができないことを説明します。この場合、上記から以下のことが前提となります。
ここで仮に、A国がB国に対して輸入過剰(貿易赤字)になったらどうでしょう。A国は、B国からの過剰になった分の輸入の対価を支払うためにB国の通貨を手に入れなければなりません。
A国の通貨からB国の通貨へ両替するという③自由な資本移動が活発になると、A国通貨安(B国通貨高)への圧力が生じます。
A国は、①為替相場の安定を守るためには金融政策によりこの圧力を打ち消す必要があります。つまり、A国は上記の圧力を相殺するために、自国の金利を上げる金融政策を実行しなければなりません。
しかし、それでは金融政策が為替相場に拘束されるので上記の前提が崩れてしまいます。A国は②金融政策の独立性が守られているので、A国通貨安(B国通貨高)への圧力に逆らうことができません。したがって、A国は為替相場の安定を諦めなければなりません。
③自由な資本移動と①為替相場の安定を守る場合
次に、③自由な資本移動と①為替相場の安定を守る場合です。そして、この場合は②金融政策の独立性の安定を守ることができないことを説明します。この場合、上記から以下のことが前提となります。
ここで仮に、A国がB国に対して輸入過剰(貿易赤字)になったらどうでしょう。A国は、B国からの過剰になった輸入の対価を支払うためにB国の通貨を手に入れなければなりません。
A国の通貨からB国の通貨へ両替するという③自由な資本移動が活発になると、A国通貨安(B国通貨高)への圧力が生じます。
A国がこの圧力を打ち消して為替相場を安定を維持するためには、自国の金利を上げる金融政策により、上記の圧力を相殺しなければなりません。したがって、A国は②金融政策の独立性を諦めなければなりません。
まとめ
国債金融のトリレンマについて説明しました。国債金融のトリレンマとは、次の3つの政策を同時に実現することができないことを意味します。
- ①為替相場の安定
- ②金融政策の独立性
- ③自由な資本移動
これらのうち少なくとも一つは犠牲になります。
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